Booklogジャケ買い編 『センス入門』

ジャケ買いして、読み切れていない本と再度出会う。
#stay home 期間の楽しみとして、読書しています。

センス入門
『センス入門』と出会ったのは、Ginza Sevenの銀座 蔦屋書店でした。
右脳が刺激されまくるこの本屋では、直観で本を選びたくなります。
その中で私に「おいで、おいで」していたのが、この本でした。

2006年から2015年まで『暮らしの手帖』の編集長を務め、現在もエッセイストとして活躍する松浦弥太郎さんの著書です。

  • 本書は、自分の「センス」をよくするための入門書。
  • まずは、今の自分の「センス」とむきあること。 
  • センスのいい人は、頭と心の使い方のバランスがいい人
  • 一見すごく稚拙に見えるようでも、言いたいことがよく伝わる、心の引き出しを開いて、思いのままに取り出してみせる
  • 心を開くことがセンスのよさへの最初の一歩
  • 自分に許されているスペースを上手に察して、それよりも過ぎたことはしない
  • つねに、いま自分は何をすべきで何をすべきでないか、瞬間瞬間で判断する
  • 自分を認めてもらえたいと思ったら、まず自分がまわりの人たちを認める。まわりの人の素敵な部分、良い部分をみつける
  • 周りが強く勧めてくれるものには、試してみる。失敗してもいい。「らしいわねぇ」にとどまるよりも、「私には合わないわ」の方がクール

 松浦さんのセンス体得の第一歩として、興味深いのは、高校中退後に生きていくために始めた日払いのどかた仕事があったという点です。高田馬場近くの公園に集まる労務者に混じって、親方に選ばれるようにほがらかで、元気でハキハキして、使い走りでもします、とやる気アピールするの努力をした、というストーリーは、暮しの手帖の上品な世界とは対照的ですが、そこに通底するなにかがセンスである、と言われると、なるほど、それは深いぃ、と唸ってしまいます。

  • センスがよいを日本語に置き換えると「美徳」となる、その美徳とはなにか 
  • 辞書では「人につくす」とか「人に対して、自分自身に対して、すなおに生きる」とある
  • 「武士道」「徳を積む」「わび」「さび」「義理と人情」「粋」「知足」「謙遜」「無常感」「改善」「志」が自分なりの美徳
  • 「一事が万事」「小事が大事」、些細な事柄を大事に思えるか
  • 「正しい」ことよりも「変(CRAZY)である」ことを
  • 私立の美術館、根津、原、民芸館、庭園美術館などは、作品の鑑賞だけでなく、建物や庭、窓のフレーム、そこに訪れている人からもセンスを学べる
  • お手本をつくり、追っかける。志賀直哉の文章のセンスに驚いたら、彼が毎日なにを見ていたのか、何を使っていたのか、追いかけてみる

センスを磨くアイデア、センスのお手本と章が続いた上で、松浦さんは、「セントのよさとは、生きていくことのすべてなのです」と言い出します。「おしゃれな格好をすればいいというだけでなく、人付きあい、話し方、時間の使い方と、とどまることを知らない、バランス感覚なのだと僕は思います」。

ヒントも示してくれるけど、最後は「バランスをとるには、身銭をきって一流に学ぼう、美しいものをシェアすることで、ソシアルワークしよう」と締めくくります。

個人的には、松浦さんがセンスを「無常感」という言葉に置き換え、「無いものが持つ美しさを愛で、目に見えないものを慈しむ」、というメッセージが、強く印象に残りました。暗黙知の美ですね。